お知らせ

NEWS

【吉田町園】鎌倉女子大学 講義レポート

卒業シーズンを迎え、これから保育の道に進む新社会人の皆さまも多いことと思います。

今回は、正光寺保育園 吉田町園の園長であり、青年海外協力隊員でアフリカの幼児教育を経験したこともある杉本先生が、昨年母校でもある鎌倉女子大学で行った講義をご紹介します。

2023年に創立80周年を迎える鎌倉女子大学は、幼稚園教諭や保育士をはじめとした免許や資格、専門性の高いスキルを必要とする職業に就くための学びを提供している大学です。

鎌倉女子大学が母校でもある杉本先生は、2018年~2020年のあいだ青年海外協力隊としてガボン共和国に派遣されており、その経験を踏まえ、今回は「建学の精神」というテーマで講義を行いました。

参加は約150名と、多くの学生に聴講いただきました

ここからは講義の内容をコンパクトにご紹介したいと思います。

 

高校生時代、国際交流キャンプに参加した杉本先生は、もともと海外に興味があったことから海外旅行のほか、タイの日系幼稚園インターンシップ、ウガンダスタディーツアー、インドのマザーテレサの施設でボランティアを経験しています。

大学卒業後は幼稚園教諭として就職しましたが、これまでの海外での経験を生かしたいと考え、その後、青年海外協力隊で国際協力の道へと進みました。

大学ではフランス語を専攻していたこともあり、母国後がフランス語であるガボン共和国に派遣されることになります。

 

現地では、情操教育(図工、音楽、体育)の普及ということで現地の教育機関で研修講習会、現地の教育カリキュラム作成に携わったりするほか、日本文化(地理、挨拶、書道、折り紙など)を紹介するなどの活動を行いました。

また、滞在期間2年のうち2回、ガボン式の運動会を開催したことも大きなイベントの一つでした。

子どもたちと練習を重ね、ラジオ体操、デカパン競争、リレー、綱引きなど競技のほか、ソーラン節を披露しました。ガボン共和国では、子ども達の成長を保護者の方に見てもらう行事や機会がない為、保護者の方も参加できる型にしました。子どもも嬉しそうに活動に参加しながら保護者も一緒に応援したり楽しんでもらう機会を設けることで、子どもの成長を保護者の方と共に共有共感してもらえる場になれたらと考えたからです。

現地では、保育の環境が異なる以上に、文化の違いに直面します。

意外に思われるかもしれませんが、ガボン共和国では、何か物が壊れたり新しいものが必要となると使えるように直すではなく買い替える、新しく買うことが当たり前当でした。また、掃除や整理整頓を行う習慣がなく派遣当初は、教室がゴミでいっぱいだったそうです。本来の活動を行う以前にまずは身の回りことをということで、授業が始まる前に3分間清掃を行い、習慣化するようにしました。

日ごろ、私たちは掃除や再利用したほうがいいとわかっていても、なかなかできない、という状況はあるかもしれませんが、ガボン共和国では、なぜ掃除するのか、どうやって再利用するのかわからないという状況でした。文化や社会性の違いからどちらが正しい、どちらが間違っているではなく、日本とガボンの“違い”を受け入れるところから活動を始めたそうです。

押しつけではなく、文化の違いをどのように歩みよっていくかは大きな課題でもあり、この活動の魅力でもありました。

 

とくに現地の衣食住の考えは日本と大きく異なり、例えば、衣服の鮮やかなデザインやそれが持つ意味は、日本の文化と大きく異なります。

日本では、就業時の服装はシンプルで落ち着いたものが推奨されるのが一般的ですが、諸外国では華やかであること、女性であれば高いヒールを履き、鮮やかなスカートで授業することが良い事、素敵な先生の証と評価をされます。

ちなみに今回、杉本先生は、現地で作ってもらった鮮やかなワンピースを着て講義をしました。

現地では、日本で着るようないわゆる私服と呼ばれるものはとても高価な為、諸外国では仕立て屋さんに行き、布を購入して、自分の採寸に合った好きなデザインで洋服をオーダーします。服装一つでもこんなにも違いがあるのです。ちなみこのような仕立てた日本にはなじみのない柄や鮮やかな服は、諸外国では正装服とされています。

講義の終盤では、ガボン共和国で実施した運動会の様子を動画で紹介しました。

動画では、子どもたちがたくさん練習したソーラン節の様子を紹介し、講義を聞いていた学生からも思わず声が上がりました。

杉本先生は、2年間の経験を次のように語ります。

「自分の当たり前は、相手の当たり前ではない。」私は、日本で育ち日本の教育を受けて育ちました。日本にはたくさんのルールがありその中で私なりの常識(当たり前)が育ちました。それと同じように諸外国にもルールや決まりがあります。それが異文化理解です。

どちらが合っているか間違っているかではなく、それぞれの“違い”を理解し(理解できない事も理解する)歩み寄ることで、深まっていくと考えます。そこにはたくさんのエネルギーと時間が掛かる場合もありますが、互いを知り尊重する為には向き合うことは必要不可欠です。その過程があることで、その先の子ども達の成長が見え、繋がっていくのだと思います。

大学卒業後に、さまざまなかたちで保育に向き合ってきた杉本園長先生。今回の講義で、若い学生の皆さんが、これからの学生生活や保育との向き合い方を考えるきっかけになったら、私たちもとてもうれしいです。